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良性腫瘍・嚢胞(りょうせいしゅよう・のうほう)

良性腫瘍・嚢胞

良性腫瘍・嚢胞


顎骨 (あごの骨) にも様々な病気が発生します。歯に関連した腫瘍または嚢胞 (袋) を歯原性腫瘍または嚢胞、歯に関連しない非歯原性のものも数多く存在します。以下に頻度の高い疾患について説明します。

1)歯牙腫



歯を構成するエナメル質、象牙質、セメント質など、歯の組織の過剰増殖により出来た良性腫瘍です。一般的には10歳台で発見されることが多く、偶然エックス線検査で見つかることも少なくありません。ほとんどの場合、歯牙腫の存在のため永久歯が生えてこない例が多いため、永久歯の生え替わりがあまりにも遅い場合、エックス線検査を受けられることをお勧めします。
治療法は腫瘍摘出術を行い、可能な限り永久歯の萌出誘導を行います。
図1は12歳の男児で左下第2大臼歯 (12歳臼歯) が生えてこないことで受診。矢印の示す歯牙腫のみを摘出し、永久歯の萌出を誘導します。
図2は8歳男児で右上第1大臼歯 (6歳臼歯) が生えてこないことで受診。矢印の示す歯牙腫 (過剰歯) のみを摘出し、永久歯の萌出を誘導します。

歯牙腫

2)エナメル上皮腫



顎骨に発生する代表的な良性歯原性腫瘍です。10〜20歳台で発見されることがほとんどで、無症状で経過するために顎骨の腫れ、顔面の変形、永久歯が生えてこない、歯が移動するなどの症状で受診する事が多く、比較的病変が大きくなって発見されます。
治療法は大別して顎骨切除療法と顎骨保存療法に分かれます。前者は再発の危険性が少ない分、周囲の顎骨、歯、神経を含めて大きく切除する方法で、治療期間は短縮できますが侵襲が大きい手術です。一方、後者は出来る限り骨、歯、神経などを保存する治療法で、侵襲は少なくすみますが、治療期間が長いこと、数回の手術が必要になること、再発の可能性があることなどがデメリットに挙げられます。病気の状態によっては保存療法が出来ない場合もありますが、当科では出来る限り侵襲の少ない顎骨保存療法 (開窓療法といい、病気の一部に穴をあけて内圧を減少させることで、病気の縮小や骨の再生を待って 2 次的に摘出する方法) を選択しています。
下図左(図3)は白線で囲む左下あごの大きな腫瘍です。CT 検査から腫瘍が塊 (充実性) ではなく液体を貯めた袋状 (嚢胞性) であったため、局所麻酔で開窓療法を行いました。1年6カ月の開窓で下図右(図4)のように著明な腫瘍縮小を認めます。最終的には局所麻酔で歯や骨を保存しつつ摘出します。顎骨切除療法であればあごの骨を大きく切り取らなければならず、全身麻酔での侵襲の大きな手術になりますので、開窓療法は体に優しい治療法と言えます。

エナメル上皮腫






下図左(図5)は白線で囲む左下あごの大きな腫瘍です。CT 検査から腫瘍が塊 (充実性) であったため顎骨切除療法を行いました。
下図中央(図6)は手術後の写真です。腫瘍を含めてあごの骨を切除し、同時に自分の腰骨 (腸骨) を移植してあごの骨を再建しました。
下図右(図7)は移植した骨がくっついた (生着) した時点で、しっかり食事が出来るようにインプラント (人工歯根) を植え込んだ写真です。これで自分の歯のようにしっかり食事をすることが可能になりました。
このように顎骨切除療法でも、再びあごの骨を造り咬めるようになります。

レントゲン

3)角化嚢胞性歯原性腫瘍



エナメル上皮腫と並び顎骨に発生する代表的な良性歯原性腫瘍です。ほぼ無症状で経過するために、比較的病変が大きくなって発見されることが多い疾患です。この腫瘍は袋状 (嚢胞性) に増大する腫瘍ですので、当科ではほとんどが顎骨保存療法 (開窓療法) を行い、なるべく侵襲が少ない治療を選択しています。
ただし、この腫瘍は再発傾向が強い腫瘍の一つですので、長期的な経過観察が必要となります。
下図左(図8)は白線で囲む右下あごの腫瘍です。1回で切除するにはあごの骨を大きく切除しなければなりません。
この腫瘍は袋状ですので、下図中央の写真(図9)のように親知らずを抜歯して開窓療法を行いました。
下図右(図10)は開窓療法を開始して2年後の写真です。白線で示すように病変は骨を再生しながら大きく縮小しているのが分かります。最後に、局所麻酔下で摘出術を行いました。

角化嚢胞性歯原性腫瘍

4)歯根嚢胞

歯根嚢胞


顎骨に発生する最も頻度の高い嚢胞性 (袋状) 疾患です。神経をとった (いわゆる根っこの治療) 後の根っこの先に生ずる膿の袋のことを言います。
病巣が小さければ根っこの治療を再度行うことで治癒する場合もありますが、ある程度大きくなると外科治療が必要となります。原因となっている歯の状態が悪ければ抜歯とともに嚢胞を摘出しますが、下図左(図11)のように歯を保存出来る場合には、下図右(図12)白線部分に示すように汚染された歯の根っこだけ切断して (歯根端切除術) 、嚢胞とともに摘出します。

また、下図左(図13)の白線で囲むように大きな嚢胞の場合には、上述した開窓療法を行い、下図右(図14)のうように嚢胞が縮小してから摘出します。

5)含歯性嚢胞

含歯性嚢胞


顎骨に発生する比較的頻度の高い嚢胞性 (袋状) 疾患です。埋もれた歯 (埋伏歯) の頭 (歯冠) を含むように嚢胞が発生することから含歯性嚢胞と言います。治療法は病気が小さければ埋伏歯とともに嚢胞を摘出しますが、下図左(図15)の白線で囲むように大きな場合には、開窓療法を行います。この症例は3カ月間の開窓療法のみで、下図右(図16)に示すように病気が完全に消失しました。


担当:碇 竜也

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