TOP患者さんへ口唇口蓋裂

1.ロ唇裂、ロ蓋裂とは

口唇口蓋裂

口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)について


生まれつき上唇に裂がみられる病気を「口唇裂」と言います。口唇裂には左か右か一方だけのもの(片側性)(図1)と左右両方のもの(両側性)(図2)があります。また、口の中の上顎を口蓋といいますが、生まれつき口蓋に裂がみられる病気を「口蓋裂」(図3)といいます。上顎歯肉部の裂を「顎裂」(図4)と言います。これらの裂は、それぞれ単独でみられたり複合して見られたりします。

2.原因について

口唇口蓋裂例


口唇裂や口蓋裂が起こる原因は現在のところ明らかではなく、遺伝的要因と環境的要因の両者が関係していると考えられています。日本人では口唇裂、口蓋裂の子供は約500人に1人と比較的高い割合で生れます。




3.治療について


治療に必要なこと


口唇裂や口蓋裂の治療は出生直後の授乳から成人になるまでかかります。また、その治療には産婦人科、小児科、耳鼻科、歯科の先生や言語聴覚士など多くの専門医との連携した治療(チームアプローチと言います)が必要です。当科では手術を担当しています。また、同じ病気をもった家族同士の連携や情報の共有も子供を育てて行く上で大切ですので、「福岡親子の会 つばさ」(http://www.dent.kyushu-u.ac.jp/tsubasa/)を開設しています。

口唇形成術例

口唇裂の治療


【口唇形成術】
口唇裂の患者さんには口唇形成術を行います。当科では生後3〜4ヶ月、体重5〜6kgで手術を行っています。乳児はこのころになると全身の機能も発達し、より安全に手術が行えるようになるからです。術式は教室開設以来一貫して片側性唇裂に対しては三角弁法(クローニン法)を、また両側性唇裂に対しては1回で行う場合と2回に分けて行う方法を症例に応じて選択しています。入院期間は約10日です。手術は単に唇を閉じあわせるだけではなく、なるべく自然に近い唇の形と機能を作ることが必要です(図5)(図6)。

(術後の注意)
術後はできるだけ傷を目だたなくするため、術後3カ月間は創部へのテープ貼付と薬の内服や、必要であれば鼻の形をよくするため取り外し可能な小さなチューブの鼻穴内への挿入をしています。外来での定期的な検診を受けていただいています。

口蓋形成術例

口蓋裂の治療


【口蓋形成術】
口蓋裂では手術前は口と鼻腔が通じていますので、話す時の声が鼻腔にもれて発音がはっきりしない鼻声になります。従って、口蓋裂は口の中の病気ですので外見的には見えませんが、口蓋形成術が必要です。当科では1.5〜2歳、体重10 kg前後で手術を行っています。この時期は少しづつ言葉を発するようになる時期です。手術方法はPush back法やFurlow法を症例に応じて選択しています。手術は単に裂を閉じるだけではなく、発音時にのどから鼻へ空気がもれないように発音する際に使う筋肉を正しい位置に直します。(図7)(図8)入院期間は約10日です。
術後の発声時の空気の鼻漏れを閉鎖する機能(鼻咽腔閉鎖機能)は4歳時で良好が88.1%で、軽度不全、不全はそれぞれ7.1%と4.8%です。もし、術後に鼻咽腔閉鎖不全が認められた場合には、不全の原因や程度をX線や内視鏡などを用いて総合的に診断して治療方針を決定しています。多くの場合、第一選択としては上顎に入れ歯の様な形をした特殊な補助装置(軟口蓋挙上装置)を用いた治療を行っており、これによって約6割の患者さんが改善します。必要であれば口蓋再形成術などの手術も行います。口蓋裂のお子さんは一般のお子さんよりも中耳炎になりやすい特徴がありますので、口蓋形成術前に耳鼻科で診察を受けてもらい、必要であれば鼓膜へチューブを挿入する手術を口蓋形成術と同時に行っています。

(術後の注意)
術後1ヶ月は柔らかい食べ物を食べてもらうとともに、おもちゃなどを口にくわえないように注意が必要です。また、術後1か月からは正しく発音できるように言語訓練を開始し、その後も定期的な受診と検査を行います。


顎裂の治療


【腸骨移植術】
顎裂に対しては歯肉部での骨の連続性を作り、永久犬歯の萌出を誘導させるため、自分の腰骨(腸骨といいます)から骨髄(海綿骨)を採取して、顎裂部へ移植する自家腸骨海綿骨細片移植術を行います。移植された海綿骨は顎裂部で周囲の骨と一体化します(図7)。しかし、移植した骨の一部が吸収されてしまう事があります。当科で術後6ヶ月での垂直的な骨形成幅へ影響を及ぼす因子について検討した結果、1)裂型(両側性唇顎口蓋裂か否か)、2)手術時年齢(13歳以下か否か)、3)顎裂幅(10mm以下か否か)、4)鼻口腔瘻径(径5mm以下か否か)が影響を及ぼす因子であると判明しました。よって、最近ではこれら悪影響を及ぼす因子を出来るだけ排除して手術に臨んでいます。また、海綿骨と同時に骨膜移植を行うことで永久犬歯の顎裂部への誘導が可能な垂直的骨架橋形成率は97.1%と高い成績が得られています。

担当:窪田 泰孝

疾病別案内

関連リンク

  • 九州大学
  • 九大歯学部
  • 九大病院

交通機関リンク

お問い合わせ

●受付時間
初診/8:30‐11:00
再診/8:30‐3:00
再診/自動受付機 8:15‐17:00
●休診日
土・日・祝日、年末年始


●所在地
九州大学病院 顔面口腔外科
〒812-8582
福岡市東区馬出3-1-1
TEL:092-642-6450
FAX:092-642-6392

このページのトップへ