患者さんへ

当科では親知らずの抜歯や外傷治療、インプラント治療、粘膜疾患、顎関節症、ドライマウスなどの治療を行っております。

また、口腔領域の腫瘍や嚢胞、顎変形症、口唇口蓋裂治療といった専門的な治療も行っております。

治療をご希望の際はまずかかりつけ歯科にご相談頂き、下記電話番号までお電話ください。

 




インプラント治療/口唇口蓋裂/癌治療/外科矯正治療

1.インプラント治療とは?

インプラント治療は近年急速に普及し、一般の開業歯科医院でもインプラント治療を行う医院が増えています。しかし、土台となる骨がなければ、インプラントを植立することはできません。 当科では、一般歯科医院ではインプラント治療が困難な患者さんでも、さまざまな骨増生によってインプラント治療を可能にします(骨造成が困難な場合もあります)。

 

●骨が細いときには?

a) スプリットクレスト法

b) GBR法(Guided Bone Regeneration)

骨欠損部に骨移植を行い、特殊な膜で遮断することで、骨形成を促す方法です。

c)骨移植術(ブロック骨)

顎骨から採取したブロック骨を、骨欠損部に移植して、骨増生を行う方法です。

●骨の高さが足りないときには?

a)上顎洞底挙上術

上顎で上顎洞(蓄膿の時、膿がたまる空洞)が近接していて骨の高さが足りない場合、上顎洞粘膜を挙上させて上顎洞内に骨増生を行う方法です。

b) 骨延長術

特殊な延長装置を用いて、本来ある顎骨の延長を行う方法です。

鎮静下での治療や、入院や全身麻酔下での治療も可能です。症例の相談、処置料金などのお問い合わせなど、お気軽にご相談下さい。

 

1.ロ唇裂、ロ蓋裂とは

1.口唇口蓋裂とは

生まれつき上唇に裂がみられる病気を「口唇裂」と言います。口唇裂には左か右か一方だけのもの(片側性)(図1)と左右両方のもの(両側性)(図2)があります。また、口の中の上顎を口蓋といいますが、生まれつき口蓋に裂がみられる病気を「口蓋裂」(図3)といいます。上顎歯肉部の裂を「顎裂」(図4)と言います。これらの裂は、それぞれ単独でみられたり複合して見られたりします。

 

2.原因について

口唇裂や口蓋裂が起こる原因は現在のところ明らかではなく、遺伝的要因と環境的要因の両者が関係していると考えられています。日本人では口唇裂、口蓋裂の子供は約500人に1人と比較的高い割合で生れます。

3.治療について

口唇裂や口蓋裂の治療は出生直後の授乳から成人になるまでかかります。また、その治療には産婦人科、小児科、耳鼻科、歯科の先生や言語聴覚士など多くの専門医との連携した治療(チームアプローチと言います)が必要です。当科では手術を担当しています。また、同じ病気をもった家族同士の連携や情報の共有も子供を育てて行く上で大切ですので、「福岡親子の会 つばさ」(http://www.dent.kyushu-u.ac.jp/tsubasa/)を開設しています。

【口唇形成術】

 


口唇裂の患者さんには口唇形成術を行います。当科では生後3~4ヶ月、体重5~6kgで手術を行っています。乳児はこのころになると全身の機能も発達し、より安全に手術が行えるようになるからです。術式は教室開設以来一貫して片側性唇裂に対しては三角弁法(クローニン法)を、また両側性唇裂に対しては1回で行う場合と2回に分けて行う方法を症例に応じて選択しています。入院期間は約10日です。手術は単に唇を閉じあわせるだけではなく、なるべく自然に近い唇の形と機能を作ることが必要です(図5)(図6)。

(術後の注意)術後はできるだけ傷を目だたなくするため、術後3カ月間は創部へのテープ貼付と薬の内服や、必要であれば鼻の形をよくするため取り外し可能な小さなチューブの鼻穴内への挿入をしています。外来での定期的な検診を受けていただいています。

【口蓋形成術】

口蓋裂では手術前は口と鼻腔が通じていますので、話す時の声が鼻腔にもれて発音がはっきりしない鼻声になります。従って、口蓋裂は口の中の病気ですので外見的には見えませんが、口蓋形成術が必要です。当科では1.5~2歳、体重10 kg前後で手術を行っています。この時期は少しづつ言葉を発するようになる時期です。手術方法はPush back法やFurlow法を症例に応じて選択しています。手術は単に裂を閉じるだけではなく、発音時にのどから鼻へ空気がもれないように発音する際に使う筋肉を正しい位置に直します。入院期間は約10日です。術後の発声時の空気の鼻漏れを閉鎖する機能(鼻咽腔閉鎖機能)は4歳時で良好が88.1%で、軽度不全、不全はそれぞれ7.1%と4.8%です。もし、術後に鼻咽腔閉鎖不全が認められた場合には、不全の原因や程度をX線や内視鏡などを用いて総合的に診断して治療方針を決定しています。多くの場合、第一選択としては上顎に入れ歯の様な形をした特殊な補助装置(軟口蓋挙上装置)を用いた治療を行っており、これによって約6割の患者さんが改善します。必要であれば口蓋再形成術などの手術も行います。口蓋裂のお子さんは一般のお子さんよりも中耳炎になりやすい特徴がありますので、口蓋形成術前に耳鼻科で診察を受けてもらい、必要であれば鼓膜へチューブを挿入する手術を口蓋形成術と同時に行っています。

(術後の注意)術後1ヶ月は柔らかい食べ物を食べてもらうとともに、おもちゃなどを口にくわえないように注意が必要です。また、術後1か月からは正しく発音できるように言語訓練を開始し、その後も定期的な受診と検査を行います。

【腸骨移植術】

顎裂に対しては歯肉部での骨の連続性を作り、永久犬歯の萌出を誘導させるため、自分の腰骨(腸骨といいます)から骨髄(海綿骨)を採取して、顎裂部へ移植する自家腸骨海綿骨細片移植術を行います。移植された海綿骨は顎裂部で周囲の骨と一体化します。しかし、移植した骨の一部が吸収されてしまう事があります。当科で術後6ヶ月での垂直的な骨形成幅へ影響を及ぼす因子について検討した結果、1)裂型(両側性唇顎口蓋裂か否か)、2)手術時年齢(13歳以下か否か)、3)顎裂幅(10mm以下か否か)、4)鼻口腔瘻径(径5mm以下か否か)が影響を及ぼす因子であると判明しました。よって、最近ではこれら悪影響を及ぼす因子を出来るだけ排除して手術に臨んでいます。また、海綿骨と同時に骨膜移植を行うことで永久犬歯の顎裂部への誘導が可能な垂直的骨架橋形成率は97.1%と高い成績が得られています。

 

当科を受診する患者さまから、「口に癌ができるの?」と驚きの質問をしばしばうけます。疼痛などの自覚症状が少なく、単なる口内炎と思っていたという患者さんが多いのです。お口の中の病気は内臓のがんと異なり、開口すれば、疾患を直接診察することができるので、口腔癌は早期発見しやすい部位であるはずなのですが、専門病院を訪れる患者さんの半数は進行癌なのです。それほど口腔癌は認識されていないのです。

1. 増加する口腔癌

口腔がんの80%以上は口腔粘膜から発生する扁平上皮癌です。ある調査によると口腔扁平上皮癌は1975 年の2,100名から2005 年で6,900名に増加、2015 年では7,800名と予想されています。これは癌全体の1~2%, 頭頸部癌の約半数にあたりますが、近年急増する傾向にあり、早期発見・早期治療にむけ是非注意していただきたい癌といえます。

2. 口腔癌の種類と症状

前述したように口腔癌の80%は扁平上皮癌ですが、口腔扁平上皮癌の60.0%が舌癌です。舌癌の殆どは舌縁から舌下面にかけて発生します。ついで歯肉癌、口腔底癌、頬粘膜癌の順で認められます。口蓋癌は比較的まれとされています。  良性の腫瘍の特徴的な形は外側に隆起しており、ポリープ様といわれ、良く知られています。これに反して、癌は粘膜表面から内部に深く浸潤します。癌が結合組織に浸潤した部は硬くなり、しこりを触れるようになります。潰瘍も口腔癌によく見られます。癌性潰瘍は特徴的で、癌が周囲組織に深く浸潤するため、潰瘍周囲が膨瘤し、噴火口様の形となります。口腔癌は進行すると口の機能を奪い、発音、飲み込み、呼吸といった生命や生活の質に直接影響をおよぼします。また口は顔面の一部ですので外見上の異常も出現します。他臓器の癌と同様に早期発見早期治療が必要な癌なのです。

3. 早期発見のために

歯科医師は常時、口腔内を診察しており、口腔癌を含む口腔疾患の発見者となる機会が多くあります。口腔癌は早期に発見することが可能ながんなのですが、現在のところ症例の多くが早期癌でなく、進行癌も含まれています。早期口腔癌の臨床症状は、白斑、紅斑、びらん、潰瘍、腫瘤などです。また、以下に示すように口腔癌になりやすい状態も存在します。定期的にかかりつけ歯科医院を受診し、気になることがあれば早めに相談しましょう。

 

1.顎変形症とは

上アゴは通常、下アゴより前に出ています。でも、上アゴが前に出過ぎると 上顎前突 (いわゆる出っ歯)と言われる状態になります。また、上アゴより下アゴが前に出ると、下顎前突(受け口)といいます。  顎の骨変形によりこれらの状態が起こっている場合を顎変形症といいます。これは顎の骨に発育異常や外傷などの原因で起こります。食べ物をうまく咬むことができなかったり、発音に支障を来したり、顎の関節に音や痛みが出てきたりといろいろな問題が生じてくることがあります。

2.外科矯正治療とは

歯科矯正治療で歯性の受け口や出っ歯は治りますが、顎骨の異常である顎変形症は骨の手術が必要になります。手術で骨を切り、前に出したり、後ろに下げたりして、顔貌や咬み合わせを最も理想的な位置に修正し、金属のプレートなどで固定します。 また、手術の前後には矯正治療も必要ですので、矯正科医と口腔外科医が協力して治療することになります。

3. 治療の流れは?

・顔貌の分析、X線検査、歯列模型(歯型)などから顎変形症の診断をします。また、どんな処置、手術が必要か?という判断をします。

・歯を動かすのに必要なスペースを得るために小臼歯を抜歯したり、手術の妨げになる親しらず(智歯)の抜歯などを行います。

・矯正装置を装着し、手術後に最もよい咬み合わせになるように歯の矯正をします。約1回/月 矯正科への通院が必要です。

・入院(約2週間)してもらい、全身麻酔下に手術をします。手術時間は変形の種類によって違いますが、約2?5時間です。 術後は1週間の顎間固定(口が開かないように上下の歯をワイヤーでくくります)を行います。

・術後は矯正装置で歯の微調整をします。また、後戻り防止のために、ゴムによる顎間ゴム牽引(上下の歯をゴムでひっぱります)を行います。

・金属プレート、スクリューで固定を行った場合、術後6ヶ月以降にプレート、スクリューの除去手術が必要です。外来・局所麻酔で出来ることもあります。(除去手術がいらない吸収性のプレートもあります)

【上顎前突症の手術】
【下顎前突症の手術】

下顎枝(下顎のエラの部分)をスライス状に分割して、前方に移動させてチタン製のプレートで固定する。顎がさみしければ、さらにオトガイ部(下顎の先の部分)を切って、前方へ移動せて固定する。

【非対称の手術】

5. 治療費は健康保険の適応になります

当科で顎変形症と診断されて、外科矯正治療を行う場合、入院・手術の費用は全て保険適用になります。なお、手術のための術前および術後の矯正治療も保険の適用になります。